Nagizuburogu |
This is Nagi's blog, from Japan. Me: Female/22/Sociology |

母に教えられた喫茶店に通っている。
その喫茶店は団地の中にあって、ガラス張りで明るい店内に、真新しい木製の家具が並べられている。
客がとても少なくて、静かなのが良い。
コーヒーが230円で、おおきいクッキーが60円なのが良い。
で何よりも、そこの店員が良い。
レジを売ったり注文を取ったりする数人のおばさんを除いて、そこで働いてるのは皆、知的障害を持った人なの。
店員さんを見ていると、色々な発見がある。何故か、小学校の時の記憶の断片や、それより小さい頃の自身の心情が一瞬戻ってくることがある。
それが好きで、私はこの喫茶店に足しげく通っている。
今日、ひとりの男性店員について。
中年の女性客2人が席を立った後のテーブルを、片付けはじめる。
クリームソーダを飲んだ後のコップが二つ、コースターが二つ、おしぼりが二つ、テーブルに残されている。
彼はじぶんの持っているお盆を、隣のテーブルに置く。
おしぼりをひとつ手にとって、隣のテーブルまで歩き、お盆に置く。まだ食器の残っているテーブルに戻る。
おしぼりをひとつ手にとって、隣のテーブルまで歩き、お盆に置く。まだ食器の残っているテーブルに戻る。
今度はグラスをひとつ手にとって、隣のテーブルまで歩き、お盆に置く。はっと気づいたように、グラスの表面におりている水滴を、ふきんで綺麗に吸い取る。お盆にグラスをきちんとおき、食器の残るテーブルに戻る。
もうひとつのグラスを手にとって、ふきんで水滴をぬぐいながら歩き、お盆にグラスをことん、と置く。
コースターに関しては、ふたついっぺんに手にとって、お盆に等間隔にそれを並べた。そしてその上にグラスをひとつ、ひとつと置くと、彼はお盆を両手で丁寧にもちあげ、店の奥に消えて行った。
なんつう丁寧な動作だ、と思った。別に急ぐ必要も無い。客はもう私しか居ない。そもそも、効率を上げて、店の回転を上げて、すこしでも多く儲けて、そんな必要はこの店には全く無い。たぶん市から、助成金が出ているんだろう。大流行りとは言えないこの喫茶店は、もう10年以上ここにあるし、つい最近改装をしたようで、敷地が倍以上に、そして家具も一新していた。
ああいう丁寧な動きをするカフェ店員というのは、どこを探しても絶対にみつからない。
店員は、忙しく動かなくちゃいけない。もしやることが無くて暇でも、なにか忙しいフリをしないといけない。それがお時給で働く人間の、最低原則だからだ。
それにしても、所作が丁寧なひと、というのに私はずっと憧れを持っている。
彼の一連の動作をみて、私が小学校のころに好きだった女友達を思い出した。
彼女もまた、きちん、きちん、とした所作をする子だった。
ピンっと削られた鉛筆から、プラスチックの鉛筆カバーをキュッと抜いて、鉛筆のおしりにギュッとさす。
ふでばこのチャックを開けるときも、右から左に、じぃぃぃ、とゆったりとした間をもっていた。
高い位置でふたつむすびにした髪の毛の片方を結び直すとき、ほどいた髪を両手でなんどもなでながらまとめた後、親指と人差し指で一杯にひろげた髪ゴムに、何回も何回も髪をくぐらせて、そのたびにゴムをキツくしめて、さいごの一回、ゴムに髪をくぐらせて手を離したときの、飾りのプラスチックのまるいボンボンが、カンッと音を立てる様子。
私は、何年間もしまっていた子ども頃の記憶に出会って、その鮮明さに感動したりする。
あのこ今も、ああやって髪を結ぶのかな。社会に出て働いている今も、ああやってきちん、きちん、とした動作をするかな。そうだと良いね。
また、あの喫茶店に行くと思います。